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Diary


大塚 愛日記  8/8

DATE:2005/08/08(Mon) 20:31  No.43

43

        ネコが見つけた赤い風船
         〜ネコに風船小説風味〜
               最終回

本屋の主人が亡くなってから、2週間がたとうとしていた。
あれからにゃんとなく、もやもやしていたこと、主人の死因。
病気を抱えてたようには見えなかったし、
突然ウッ!てなって、アァッ!ってなって、ウワァァッ!!ってなったのか?



そのとき頭の中に嫌な二文字が浮かんだ。

自殺?

自らの命を終わらせるなんて、意味が分からなかった。
だけど、生きるよりもその方が良かったら?
なんか話を聞いてあげられたら良かった。
なんにも言い返せないけど、あの満月の夜みたいに、そばにいてあげられた。
にゃんだかな〜‥‥。

しんみりお化けにとりつかれながら、ぱっと右を向いた先には、
道路をはさんだ向こう側で信号を待つ、八百屋の奥さん。
けっこうなお腹の膨らみ。

信号が青になった。
横断歩道を渡る奥さんの様子がどうもおかしい。
お腹を押さえて座り込んでしまった。
道路の真ん中で休憩?
あのたばこ事件以来、人間に対して、良く思えなかった。
人間だって、知らんぷりするんだ。ほっとこう。
そのとき、曲がり角を、けっこうなスピードで曲がろうとしている
車が目に入った。
一瞬にして頭をよぎった。
奥さんがひかれたら、八百屋の主人は悲しむだろう。
あの家に飼われてるあいつも、悲しむだろう。
なにより、膨らんだお腹はどうなってしまうんだろう。

にゃー!!!

解る訳がない。
言葉がだめなら、体がある。
そう思ったときには、猛ダッシュで車に飛び込んでいた。

キキーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!

フロントガラスに跳ね飛ばされ、おかげでびっくりした
運転手は急ブレーキをかけて、車は止まった。

‥‥‥体が動かない。めちゃくちゃ痛い。
視界がうにゃうにゃしてきたけど、助かった奥さんが見えた。
そのうち奥さんは駆け寄った人に連れられ、タクシーで、病院に向かった。

仰向けに倒れたネコは最後に思った。

ああ、晴れてる、今日はとっても晴れてる。
青が綺麗だ。雲が綿菓子に見える。

もう手をのばす力はなかった。
ふわりふわりと、大きくなった赤い風船はまっすぐ、
高く高く飛んでいく。

みゃあ‥‥

つむった目から大粒の涙がこぼれた。



ー2年後

散歩にきていた八百屋夫婦の子供はすっかり大きくなっていた。
緑の丘の上をよちよち歩く少女は、あるものを見つけた。
大木の枝にひっかかったしぼんだ赤い風船。
そよ風にふかれて少女の手元に落ちてきた。
しっかり受け取った少女は、にっこりと微笑んだ。


ネコが見つけた赤い風船は、あれから空を泳ぎ、
ネコの大きな愛になり、少女の手に渡った。
幼い少女は、つたない歩きで、それを手に入れた。

そう、それは、いつだってそこにある、自分で見つけにいける距離。


                        おわり

 

大塚 愛日記  7/26

DATE:2005/07/26(Tue) 12:16  No.42

        ネコが見つけた赤い風船
         〜ネコに風船小説風味〜
               第3回

妙な光景だろう。
ネコが、小さく膨らんだ風船をくわえて歩いてる。
だけど、にゃんだか誇らしげだった。
周りのネコたちは、つぎつぎと振り返った。
鼻歌なんかも、ばんばん歌った。
鼻の頭は自然と上を向く。

!!!!!!!!!

に”ゃあ”っっっつ!!!!!

肉球が熱く痛い。ひりひりとじりじりと痛む。
にゃんだ!?
道に転がる一本のたばこ。火がまだついているのか、煙が、もくもくと空にあがっていく。
これを踏んだ?
このやろう‥‥。
誰だ!と振り返っても、誰もいるはずもなく、知らん顔で通り過ぎる人間たち。
一気にがっくり。
鼻の頭は自然と下を向く。
ひょっこひょっこ歩く。

ぽたり。

一滴の涙が落ちた。
別になんてことない、少し運が悪かっただけ。
いつのまにか、忘れてた。
好きなときに泣いて、好きなときに安らいで。
簡単なことほど、難しくなってしまったこの世の中で、
どれほど、一生懸命に生きれるか。
冷めたフリすれば、傷つかないと、これほどに臆病になってしまったにゃんて、あぁ、不甲斐無い。
だけど、外をただ歩くだけで危険な世の中になってしまったのも、
事実。
誰かを傷つけても、幸せにはなれないのに。
ますます人間が解らなかった。

ぽたり。

道隅の雑草に涙がかかった。
すると、みるみる早送りのように成長し、小さな花を咲かせた。

!!!!!

その花は薄い黄色の花で、決して美しくはないけど、
にゃんだか力強かった。
こんな暗い世界でも、どんな悲しい世界でも、心を委ねてはいけない。あきらめちゃいけない。
涙の中に答えを見つけた。
失敗や絶望、おおいに泣いてしまおう。
すっきり流したら、また笑いに歩こう。
鼻の頭は自然に上を向いた。

歩き出したネコの持ってる風船が、また少し膨らんだことを、そのときはまだ、誰も知らない。
    
                         つづく

 

大塚 愛日記  7/20

DATE:2005/07/20(Wed) 15:40  No.41

        ネコが見つけた赤い風船
         〜ネコに風船小説風味〜
               第2回

晴れた日の散歩。
陽差しがまっすぐで、眩しさに、つり目になる。
無意識にくわえてきた赤い風船。
はて、これは何だろう?食えるのか、食えないのか。
今はただの小さい袋。

休憩がてらに、
商店街の八百屋の隣。
ここの主人は、やたら若い。
どうやら、奥さんは妊娠中らしく、お腹が大きく膨らんでいる。
しまった。
魚屋に行けば良かった。
でもあそこの親父はにゃんだか好かない。
休憩がてらにお昼寝してたら、主人も休憩がてらに隣にしゃがんだ。
「いいものもってるねぇ。。」
主人がしゃべりかけてきた。
横目でちらり。どうやら悪いやつではなさそうだ。
けど、こちらとしては、みゃーとしか言えにゃい‥。
道隅にポイと、ごみが捨てられる。
これは、人間のセンスなのか?
飾っているのか?
空気は日に日に汚くなる。大きく深呼吸しなくなる奴が増える。
どんどん、家から出てこなくなる、パソコンとにらめっこ。
機械はしゃべらないし、責められない、自分を守り、相手を殺せる。
これは、人間のセンスなのか?
よくわからなくて、静かにそこを立ち去った。

その夜、八百屋に飼われていたネコと知り合った。
奴は黒い体に少し小太りで、妙にひげの長い奴だった。
そこの夫婦は、とてもそいつを可愛がっていた。
興味はないが、うらやましくもあった。
「おめぇ、もしかしてそれ風船か?
 どうやら人間は皆、風船を持ってるみたいなんだ。
 その風船は故意的に膨らませれない、何かを感じたとき、知ら
 ないうちに膨らみ、失えば破裂する。どうやらすごく大切らし
 く、いつ離してしまうかわからない不安を抱えながら、生きて
 るみたいだ。人間てぇのは、不思議なもんだな。」
そんなものをずっとくわえてきたのか‥!
だんだん、風船がすごいものに思えてきて、嬉しさあまり、触れてみた。
パ、パンチ‥!!
つい、遊んでしまった。
「それでよぉ‥」ネコは興奮気味で話し始めた。
「人間の女ってぇのはもっと不思議で、持ってた風船が腹ん中に
 吸い込まれて、どうなるかと思ってたら、腹が膨らみ始めたん
 だ!!今、そっからどうなるのか見てるとこなんだよ!」

ぐぅ‥‥‥。

何も食べてなかった。その音を聞いたネコは、ほんの少し自分の餌をわけてくれた。
しかもそれはサンマだった!!
こおばしい味が口の中に広がる。

ん〜!んまい!!

幸せな気分を味わったそのとき、
風船が、ぷぅ‥と少し膨らんだ。

!!

思わず動きが二匹とも止まった。
目はこれほどにないくらい開き、キラリと光った。

そよ風に静かに赤い風船がゆれていた。
                        つづく

 

大塚 愛日記  7/12

DATE:2005/07/12(Tue) 16:32  No.40

        ネコが見つけた赤い風船
         〜ネコに風船小説風味〜

その日は満月の夜だった。
商店街は、昼間のにぎやかさを裏返す静けさだった。
いつものように、本屋の主人が、餌をくれる。
ここの主人は、何年か前に奥さんに逃げられ、寂しさ消えず、
立ち読みする人を注意するあまり、怖がられている。
そのせいか、客は少ない。
にゃんだかなーと思いながらも、餌は欲しい。
最近は、夏がきて、あったかいからか、主人は、外に出て
隣でたばこを吸う。煙は消えながら絵を描く。
恐竜‥‥花‥‥サンマ!!サンマ!!!
手を伸ばせど、煙だった。
そのあと、にゃんとも言えない顔で、主人はぼーっと夜空を見上げてる。
ただぼーっと。
ぼー。
そのぼーっとにつき合う。
雲が隠してはちらみせする満月は、やけに綺麗だった。
はて、あれはまんじゅうか。いや、せんべいか。
そんなこと考えながら、ぼーっとにつき合った。
ときたま主人の顔を見ると、心が痛くなった。
まるで、すべてを終えたような優しい顔だったから。
そして、にゃんだかいなくなってしまいそうで。
少し、甘えてみた。
少しして、主人は帰っていった。
その日は、とても綺麗な満月だった。

次の日、商店街はいつもどおりのにぎわい。
まるで車のように流れる人たちに蹴られないように、
横切るのは、ちまたじゃ、難しいとの評判だった。
何度も見送りながら、タイミングをはかる。
猛スピードでぬける姿は絶対かっこいいはずだ。
うまくいった日は、にゃんとなく気分がいい。

また、夜が来て、本屋に帰る。餌の時間。
だけど、いつもの時間になっても主人は現れない。
待っても待っても、主人は現れなかった。
にゃんだよ。飽きたのかな。こんなもんかな。
その日は、諦めた。

次の日、近くで葬儀がひらかれた。
どうやら、主人は死んでしまったらしい。
なんで死んだのかはわからなかった。
少し心痛さに、本当かどうか確かめに行った。
窓の隙間から、家に忍び込む。
しーんとした空気。あっぴらかんとした部屋の片隅に、
用意されてある餌。ねこじゃらしと、赤い風船。
にゃんともいえない気持ちに、涙がこぼれ落ちた。
死んでしまったはもう会えないと一緒?

みゃー‥‥みゃー‥‥。

あっぴらかんとした部屋に泣き声。
夢中で餌をほおばった。
主人のあの優しい顔を、思い出しながら。

                         つづく

あとがき
「ネコに風船」、なんともう発売です!この曲を聞くと、
忘れかけてた大事な物を、言葉ではなく、心で感じれます。
自分にとっての、愛を、優しく膨らましていけたら、とても、
幸せやね。いつも以上に、みんなに聞いてほしい作品です。
よろしゅう☆

 

大塚 愛日記  7/12

DATE:2005/07/12(Tue) 16:06  No.39

夏空 

 
 

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- Joyful Note -

 

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